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安達正興のハード@コラム
◆ ネタニヤフ、穏健野党と大連合( 2012年 5月 9日 水曜日 )
仏の大統領選、希(ギリシャ)の総選挙で厳しい局面に立たされたのはメルケル、敗者はEU財政規律を強化したメルケルである。
●EUを支えたフランコ-ゲルマン体制にヒビ
EUポリティックを作成してきた独仏の協調をフランスはドブに捨てる。オランドは景気浮揚策、つまりお金を印刷して市場に供給する。フランスとギリシャの国民は、赤字財政からバランスのとれた緊縮財政で欧州建て直しを図ろうとするメラケルに背を向けたのである。オランドの対EU姿勢は選挙の売りに過ぎないとの見方もあるが、近々行われる独仏首脳会談は具体策で何も出ないだろう。表向きはいくらでも飾れるが、同意できる具体策が出なければ決裂と見て良い。
●ユーロ離脱に向かうギリシャ
ギリシャの総選挙はEU脱退と反緊縮を断固遂行する急伸左派連合が躍進、移民排斥、外国勢力(EU)排除で結集する黄金の夜明け党、わかりやすく言えばニューナチである、が国会に初登場、一気に21議席を得た。
ECBから首相に請われて就任したパパデモスの人気は現実的な財政カットで人心が離反、は EU の支援金に感謝する国民性をギリシャ人は持ち合わせていない。負債を半分以上チャラにしてもらったうえ、支援金をいったい何十兆億円受けたのか、本来なら有難さに手を合わせて拝むべきと思うわたしが古風なのか。第一党のサマラス党首が大連立交渉を始めたが、はて、できるのかな?
●ツケを次世代送りにする金融緩和
●ネタニヤフ、最大野党カディマと大連立
右翼のなかの右翼ネタニヤフリクードを率いて首相になってから7年目、イランの核開発が脅威となるにおよんで地位を確かにしてきた。7年前、最大野党カディマのモファズ党首が連立に失敗したため、ネタニヤフが右派連合に成功し政権を取った。あのときは世界が驚いたけれど、わたしはノーベル平和賞を貰ったシモン・ペレスがパレスチナ・テロ対策に無能ぶりがばれてネタニヤフが初めて首相になったときから好きな硬骨漢である。
入植再開やガザ支援船拿捕など、米欧からも非難轟々だったが、オバマは首脳会談をいくら重ねてもどうすることもできない。論争ではオバマもキャメロンも歯が立たない。サルコジは合う前から負けている。そういうネタニヤフでも、議会運営は難しかった。
そこでカディマ人気が衰えたいま、総選挙を前倒しして与党の議席拡大を隠したのであるが、なんだ、カディマと大連立を組むと発表。これで120議席のうち94議席を大連立で占めるのだから政権は盤石になるが、政策は穏健にならざるを得ない。カディマは総選挙での敗退を免れるので乗って損はない。
●脅威が消えれば軟化するネタニヤフの読み
なぜネタニヤフがここにきて穏健になるのか、考えてみていちいちなるほどとおもえるのである。▽まず、イランの核施設爆撃に米の許可が出なかった。そうこうしているうちにイランでも空爆からの防御体制、ミサイルの能力が向上してイラン攻撃が現実的ではなくなったこと。▽パレスチナではハマスとファタハが和解し統一政府樹立にあと一歩、中東和平交渉の機運が出てきたこと。
イランではアフマディネジャドの支持が減少し、議会で大統領派が少数になっている。ハメイニ師の意向に反した人事がアダになったといわれる。とはいえ反対党が1議席も取れなかったことで、不正大統領選挙をやりなおせと抗議デモが起こった。しかし「ハメイニが大統領選挙に不正はなかった」と言ったことで群衆が爆発、『独裁者に死を』と叫ぶデモが広がるなど、イランにも政権崩壊の兆しがある。
ネタニヤフはその辺を読んだうえで、イランを静観、シリアを注視、トルコとの不仲は時が解決する、と踏んでいるのではないか。(了)
安達正興のハード@コラム
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